会長。私と恋のゲームをしてください。
すれ違うときに発した言葉は、彩菜先輩はもちろん、会長にも聞こえていただろう。


……帰ろう。


そう思った。


高橋家までの道をとぼとぼと歩いていく。


夏樹ちゃん、ごめん。

応援してくれていたのに、上手くいかなかったよ。


会長……。

せめて、追いかけて欲しかったな。

そう思うのは、私の片思いだからですか。


涙がこぼれていく。


すれ違う人たちに振り返られて笑われるのは当たり前。


もう、どうでもいいや……。


そう思っていると。

ぐいっと、腕を引かれた。

バランスを崩しそうになった私を抱きしめてくれたのは。



「……誰ですか」



髪の毛金髪で。

ちゃらちゃらしていて。

耳には痛々しいほどのピアス。



「君、かわいいねーっ。なんで泣いているの? お兄さんがなぐさめてあげようか?」



そう言われると、人気の少ない通りへ引っ張られていく。
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