会長。私と恋のゲームをしてください。
「くそっ」



会長は顔をゆがめた。

それから、すぐに私に駆け寄って抱きしめた。



「ごめん。……俺が目を離したから」

「会長は悪くないですよ」



自然と乾いた笑みが浮かんだ。

ははっ、と笑う自分がいる。



「笑うなよ……」

「だって、会長が来てくれたから」



嬉しかった。

会長が駆けつけてくれたことが。

会長が本気で怒ってくれたことが。


だから……っ。



「かいちょ、ぉ……」



会長が私を守るように抱きしめてくれる。

張り詰めていた心の糸が、ぷつんと切れた。

そして、涙がこぼれ、恐怖で体が震えた。



「怖かった。怖くて、怖くて……っ」

「ごめんっ……」



会長の腕の中で泣く私。

もう自分がなにを言っているのか分からなくなってきた。
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