会長。私と恋のゲームをしてください。
「北澤ー?」



会長の声だ。

下駄箱の前で固まっている私を見に来たんだ。


どうしよう。

私は慌てて、体操着を下駄箱の中に突っ込み、扉を閉めた。



「北澤?」



扉を閉めた瞬間、会長が現れた。


間一髪。

あと、数秒遅ければ、この悲惨な状態を見られてしまっていただろう。



「はいっ」

「……なにがあった」

「え? なにもないですよ」



疑問系ではない会長の問いに対して、私は知らないふりをする。

ここで全てを話してしまったら、会長に、また心配をかけてしまう。

それだけは避けたい。



「なにもなくないだろ。足元に落ちているやつ」



会長の視線の先には、飲みかけの牛乳パックに汚れきった雑巾。



「あ……」

「なにがあった」



知らないふりはもう出来ない。

会長の目が鋭くなっている。

何もしていないのに、私がすくんでしまうくらい会長の目は鋭かった。
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