会長。私と恋のゲームをしてください。
「……あれ? 北澤さんと、春馬くん?」



透き通るような声が下駄箱に響く。


声の主を見れば、彩菜先輩で。

顔を歪める会長。

昨日の恐怖を思い出す私。


そんな私たちに、気づいているのか気づいていないのか、彩菜先輩はにこにこしながら近づいてくる。



「どうしたの? 悪臭がすごいけど」



見て分からないんですか?


そう言いたかったけど、その言葉はぐっと我慢する。

彩菜先輩は何も悪くないんだから。

関係ない人を巻き込んじゃいけない。


何度も自分に言い聞かせる。

だけど、彩菜先輩は棘のある言葉ばかり放つ。



「いじめられちゃった?」



1番認めたくない言葉。

それなのに。

彩菜先輩は簡単に言ってくれる。


何も答えない私たちに、彩菜先輩はひとりで納得している。



「私は、こうなるんじゃないかと思っていたけどね」



耳を疑うような言葉だった。


こうなることを予想していた?

彩菜先輩は、私がいじめられると思っていたの?

これが“いじめ”だとしたら、なんで彩菜先輩はにこにこ微笑んでいるの?
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