会長。私と恋のゲームをしてください。
会長が何か言いかけているのは分かっていた。

だけど、その言葉は聞きたくなかった。

聞いてしまったら、私の覚悟が揺らいでしまうと思ったから。


下駄箱……。

どうしようか。


……みんなが居なくなってから片付けよう。


私は鞄を握り締めて職員室へ向かった。




無事、来客用のスリッパを借りることが出来た。

生徒指導の先生には、『なにがあった』と、問い詰められてしまったけど。

私は『なんでもないです』と、笑顔で切り抜けた。


スリッパのパタパタ、という音が廊下に響く。

生徒たちは、教室でホームルームの準備をしている時間だろう。


それでいいんだ。


誰も居ない廊下。

それが、少し寂しくて。

だけど、ありがたかった。


もう、笑顔を作らなくていいのだから……。


口角が自然と下がってくる。


ひとりで廊下を歩いていると、私の下駄箱が見えてくる。

あの角を曲がったら、私の汚れきった下駄箱が目に飛び込んでくる。


そう、覚悟して下駄箱に目を向けたのに。
< 161 / 287 >

この作品をシェア

pagetop