会長。私と恋のゲームをしてください。
私は顔を上げた。



「理樹くんのクラスまで噂が広がっているなんて、私、有名人だね!」



精一杯の笑顔を作る。

大丈夫。

笑えている。

今日1日、ずっと笑顔を貼り付けていたのだから、今だって出来ている。


出来ているはずなのに。

理樹くんの顔を見たら、涙がひとつ、こぼれ落ちた。


なんで。

涙が、ふたつ、みっつ、とこぼれていく。



「あれっ、おかしいな。目にゴミでも入ったのかな」



涙なんて止まれ。

目をごしごし、こするのに、涙が止まってくれない。


そんな私を見かねてか、理樹くんが動いた。

ブランコに座っている私の体が、理樹くんに引き寄せられた。


ふわっと包まれる体。

私の体は大きな体に、すっぽりと包まれていて。

私の中に、安心感が生まれた。



「美雪ちゃん。もう、我慢しなくていいよ」



理樹くんの声が、耳元で聞こえる。

その声を聞くだけで落ち着く。


それは、今も昔も変わらなくて。

全てを包み込んでくれるような気がした。
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