会長。私と恋のゲームをしてください。
『その子、俺のこと嫌いだと思うんだよね』

『そうなの?』



ハルくんが悲しそうな表情をしている。

私が尋ねると、ハルくんは頷く。


ハルくんを嫌いになる女の子っていないと思うんだけどな。

だって、ハルくん穏やかで優しいし。

いつも、私のことを気に掛けてくれる。

私の相談にも乗ってくれるし。

だから私は、ハルくんには笑っていて欲しいんだ。



『その子は、嬉しいと思うよ』

『え?』

『ハルくんは怒った、って言ったけど、その子にはちゃんと伝わっていると思うよ』

『そうかな』



画面越しでハルくんはどんな顔をしているか分からないけれど、私はそう思う。



『だって、叱ってもらえるってことは、気に掛けてもらっている、ってことでしょ?』



そう言葉に表しながら、私は今日の出来事を思い出す。

会長が私を睨みながら仕事を押し付けた、と思っていたけど、本当は違うのかもしれない。

実際、今日の仕事は私か会長にしか出来なかった仕事で、それを任せてくれたんだ、と思うと少し温かい気持ちになる。
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