会長。私と恋のゲームをしてください。
部屋を出て、階段を下りる。

リビングからは、和食のいい匂いがした。


高橋家に来て、初めての朝を思い出す。


あの日も、和食のいい匂いがしたな……。

ああ。

涙腺が弱くなる。


深呼吸をして気持ちを整える。

階段を下りきる。


リビングから、キッチンに立つ会長の姿が見えた。

会長も私の存在に気がついたのか、こちらを見た。



「おはようございます」

「……おう」



そっけない返事。

会長はすぐに目線をそらして、朝ご飯作りを再開する。

普段だったら、もう話しかけるのは諦めて、心の壁を作っていたと思う。

だけど、会長との壁は作りたくない。

すでに壁があるとしたら壊したいと思うから。



「会長」



私はまっすぐに会長を見つめた。

会長が再び私を見てくれる。

それだけで嬉しかった。



「話があります。今日のお昼休みに時間をください」

「……」

「屋上で待っています」
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