会長。私と恋のゲームをしてください。
「……お前に好きな奴がいるって聞いたときは焦った」



会長が呟く。

ぼそりと呟いたような小さな声だったけど、はっきり聞こえた。


会長の言葉が、頭の中でリピート再生される。


私、会長に、『好きな人がいる』って話したことあったかな?

記憶の中では、話したことないような気がするけど……。


思い出そうとしても思い出せない。

私は諦めて、会長に聞くことにした。



「私、会長に好きな人の話しました?」

「……」



会長は振り返ることなく、私の前を歩き続ける。


私の質問になにも答えてくれない。

なんで何も言ってくれないんだろう。


気づけば、高橋家についていた。


玄関の鍵を開ける会長。

扉を開けて、会長は家に入っていく。

私もローファーを脱いで、会長のあとに続く。



「北澤」



リビングに入ったところで、ようやく会長が振り向いた。
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