会長。私と恋のゲームをしてください。
“ファイツ”を久しぶりにプレイした私たち。

気付けば、午後6時半。

そろそろ夏樹ちゃんが帰ってくる時間だ。

そう思っていると、元気な声が聞こえた。



「ただいまーっ!」



夏樹ちゃんはパタパタとリビングに入ってきた。



「おかえり」

「おかえりなさい」



私たちはゲームから目をはずして、夏樹ちゃんを見る。


夏樹ちゃんはというと。

大きな目をさらに丸くさせて、固まっていた。



「お、」

「……お?」

「お兄ちゃんがゲームやってる!」



夏樹ちゃんは心底びっくりしている様子。

私も会長がゲームする姿なんて想像できなかったから、最初はびっくりしたけど。



「じゃなくてっ!」



夏樹ちゃんがひとりでノリツッコミを始めた。

そういうところも可愛い。



「美雪ちゃん! お兄ちゃんと話せたの!?」



夏樹ちゃんが私のそばへ駆け寄ってくる。

リビングの床にしゃがんで、目を輝かせている。

それはいいのだけれど、会長の前で質問されるのは少し恥ずかしかった。


夏樹ちゃんには応援してもらっているし、隠すことでもないから正直に言う。



「付き合うことになりました……」



語尾に向かって小さくなる声。

だけど、夏樹ちゃんはしっかりと私の言葉を拾っていて。
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