会長。私と恋のゲームをしてください。
「……会長が体育の授業のときに、鍵を盗みました」



片方の女子生徒が、震える声で言う。


はあ、と大きなため息をつく会長。

そのため息にさえ、震え上がる2人。



「お前たちがしたことは許されることではない」



会長の言葉が、静かな廊下に響く。



「だけど、鍵の管理を怠った俺も悪かった」



やっぱり会長はすごい。

会長の一言があるだけで、ここにいる全員の気持ちが救われる。



「北澤。2人をどうしたい?」



……どうしたいか。

会長が私の気持ちを聞いてくれる。

それが嬉しかったし、彼女たちも反省しているみたいだし。



「これからは充実していると言えるような、毎日を送ってください」



多分、この2人は会長のことが好きなんだろう。

嫉妬からの怒りに任せて、今回のような出来事を起こしたのだと思う。


その気持ちは分からなくもないけれど。

限りある“高校生活”という時間を無駄に過ごして欲しくない。

大人になって後悔するような生活は送って欲しくない。


それは、私も同じ。

限りある時間を、負の感情で過ごしたくない。


だから、私は彼女たちを許すんだ。


……会長の顔を見れば、少しだけ。

少しだけ優しい笑みを浮かべていた。



「もう、こういうことは二度とするなよ」



彼女たちは、最後に頭を下げて走っていった。

廊下には、私と生徒会のメンバーだけが残っている。
< 233 / 287 >

この作品をシェア

pagetop