会長。私と恋のゲームをしてください。
「好きなものは好きって、ハッキリ言え」



好きなもの?


私は……。

ゲームが好き。


だけど、『ゲームが好き』と言ったところで友達なんて出来なかった。

“自分”を出せるような相手もいない。

だから、“自分”なんて出せるわけがない。

自分の意見を言ったって、人に届くとは思わない。


思わないけど。



「……ありがとうございます」



会長の目を見て言えた言葉。

それは、会長が優しい目をしていたから。

私のことを思って言ってくれたのが伝ったから。

素直に『ありがとう』が出てきた。


そんな私の姿に驚いたような会長だけど、それは一瞬のことで。

ふっと、柔らかく微笑んでいるように見えた。



「昼休みくらい、笑えよ」



短い言葉の中に、温かさを感じた。


もしかして、会長は私に友達がいないことも知っていたのかな?

昼休みにひとりでお弁当を食べることも。

好きなことを語れる相手がいないことも。

私が笑っていないことも。


全て会長には見透かされているように感じた。
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