会長。私と恋のゲームをしてください。
きゃぁあ、と女子生徒からの歓声が鳴り止まない。


会長からマイクを受け取る私。


早く進行しなきゃ。

この盛り上がりの熱を冷まさないようにしなきゃ。


そう思うのに。

嫌でも、会場から『かっこいい』や、『お似合いの2人』などの声が聞こえてくる。


……そうだよね。

やっぱり、誰がどう見てもお似合いの2人なんだ。


一歩後ろに下がってしまう私。


後ろを確認しないで下がった私が悪かった。

ステージに立つ、候補者にぶつかってしまった。



「ごめんなさい、」



謝ろうと振り向けば、理樹くんが立っていた。


そっと私の両肩に手を置く理樹くん。

理樹くんが耳元でささやく。



「大丈夫?」



……大丈夫なんかじゃない。

だけど、私は理樹くんに笑顔を作る。

笑えているか分からないけど、この場の空気を壊したくないから。


理樹くんが眉間にシワを寄せる。

どうしたんだろう、と思った瞬間。

私が握っているマイクを、理樹くんが奪っていく。



「あっ、」



私の声がマイクに入ってしまう。

一瞬にして会場が静まり返った。

生徒からの注目を浴びる私と理樹くん。


どうしよう、とあたふたしている私の隣に立つ理樹くん。

マイクを持った理樹くんは嫌味っぽく笑った。
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