会長。私と恋のゲームをしてください。
私の涙は止まらなかった。

会長にこんなボロボロの姿を見られるのは嫌だけど、それでも、私の知っている人に見つけてもらった安堵感。



「北澤。なにがあった」



会長は私と目線を合わせるように腰を下ろす。

疑問系じゃない言葉。

その言葉が私の胸にすっと入ってくる。


ずっと気を張り詰めていた私。

意地を張っていた私。

それら全部を溶かしてくれるようだった。


誰かが目の前にいてくれる。

私と同じ視線でいてくれる。

不安と恐怖でいっぱいだった私の心が徐々に落ち着いてくる。


だけど、涙は止まらない。

この涙は一体なんなのか。

それすらも分からなくなってきた。



「北澤」



ぽん。

頭に温かい重みがかかる。

泣きじゃくってうつむいていた私は、思わず顔を上げる。

目の前にいる会長は、全てを包み込んでくれるような穏やかな表情をしていた。
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