会長。私と恋のゲームをしてください。
「家がない?」



会長が眉間にシワを寄せる。

私は黙って頷く。



「その大量の荷物からしたら、家出じゃない……、か」

「はい」



会長は腕を組んで、少し考えるそぶりをする。


腕を組んでから、およそ10秒。

会長は腕を下ろし、私に手を差し出してくる。

よく映画とかである、『この手を握って』と差し出す王子様のように。


……この手は握ったほうがいいのかな。

手を重ねなかったら、重ねなかったで色々言われそうだしなぁ。


恐る恐る、自分の右手を動かす。

ためらいはあったけど、なんとか会長の手と重なる。


映画のお姫様ってこんな気分なのかな。

手汗が止まらないよ……。


と、思っていると。



「違う」



思いっきり手を振り払われた。


え。

失礼なんじゃないか、と思うくらい、勢いよく振り払われた。
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