会長。私と恋のゲームをしてください。
「荷物だ」

「はい?」

「荷物をもってやる、って意味だったんだけど?」



あー。

荷物。

荷物ですね。

この大きなリュックとショルダーバックを半分持ってくれる、とかそういう意味だったんですね。


……勘違いにも程がある。

恥ずかしすぎてモグラになりたい。

穴掘って会長の前から消えたい。



「そのリュック貸せ」



会長はもう一度、手を差し出してくる。

リュックを貸してどうなるんだろう。

疑問しか浮かばない。


そんな私に会長は当たり前のことのように言葉を発した。



「ウチに来い、って言っただろ」



真剣な表情の会長。

その瞳に吸い込まれそうになってしまう。



「荷持、持ってやる。……話は後で聞くから」



頭の整理が追いつかない私のリュックを奪うようにして持つ会長。


本当に会長の家に行くってこと……?


私のリュックを持って歩き始めた会長のあとを慌てて追う。


家を飛び出したときより、外は暗くなっている。

だけど、私の心は少しずつ温まっていた。
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