会長。私と恋のゲームをしてください。
「美味しい……」



会長の顔を見れば、少し嬉しそうに微笑んでいた。


パチッと目が合う。

私が見ていたのがばれたのか、会長はすぐに目を逸らした。


真顔に戻る会長。

さっきの笑顔には見惚れてしまいそうだった。

目が合った瞬間、ドキッとしてしまったのも事実。


なんともいえない雰囲気を破ったのは会長だった。



「夜中に街でふらついていた理由はなんだ」



会長が真剣な表情をする。

そうだ。

本題は、私の家についてだ。

夜中、歩いていたのも、私に家がないから……。



「実は、」



私は、マグカップをテーブルに置く。

すっかり温まった手を両膝にのせた。



「私の住んでいたアパートを改装するから、出て行って欲しいと大家さんに言われて」



緊張する。

自分のこと、自分の家のことを誰かに話すのってこんなに緊張するんだ。



「両親はそれぞれ実家に行くことになったんですけど、私はこの街に残りたくて」



先ほどの出来事を思い出す。

膝の上で握っているこぶしが震える。
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