会長。私と恋のゲームをしてください。
「おまたせ」



夏樹ちゃんは小さな机の前で、ちょこん、と正座をしていた。

私は夏樹ちゃんの後ろで立ち膝をする。

机の上に置いたブラシを手にとって、髪の毛をとかしていく。



「美雪ちゃん」



少し元気がないような夏樹ちゃんの声。

私が夏樹ちゃんの部屋を出た一瞬の間に、なにかあったのだろうか。



「どうしたの?」



私はブラシを机の上に置いた。



「私って、男の子みたいかなぁ?」



そんなことないのに。

夏樹ちゃんは、どうしてそう思ったのだろう。



「部活の規則で髪の毛を短くしてから、クラスの人たちから、からかわれるの。……“男の子みたい”って」



髪の毛をいじりながら、夏樹ちゃんの話を黙って聞く私。



「本当は可愛いものが大好きなのに。だけど、教室で男の子みたいに振舞っちゃう自分がいるの」

「そっか」

「好きなものを好きって言えないの。男の子みたいな私が、女の子らしくしたら、もっとからかわれる……」



その声はどんどん小さくなっていく。

夏樹ちゃんは夏樹ちゃんなりに悩んでいることがあるんだね。


髪の毛を整え終えた私は、夏樹ちゃんの肩にぽんっと、手を置いた。
< 68 / 287 >

この作品をシェア

pagetop