会長。私と恋のゲームをしてください。
「好きだよ」

「じゃあさっ!」



夏樹ちゃんが私の目の前に立ったと思ったら、夏樹ちゃんの手が私の顔へと伸びてくる。

思わず目をつぶる私。

それは一瞬のことで。

ゆっくりと目を開ける。



「メガネしていない美雪ちゃんもかわいい!」



そう言った夏樹ちゃんの手には、私のメガネが握られていた。

メガネがなくて、ぼやける視界。

いつも、当たり前のようにメガネをかけていたから、メガネをかけていない今が変な感じする。


それに。

髪の毛も結んでいない。

いつもは三つ編みにしているけれど、今朝は時間がなかった。


私じゃない私。

なんだか恥ずかしく感じた。



「夏樹ちゃん、メガネ……」



目の前に立っている夏樹ちゃんは、多分、意地悪く微笑んでいる。

メガネを返してくれる気配がない。



「お兄ちゃんも見て!」



夏樹ちゃんが、さっと私の後ろへ回った。

と、思ったら、私の背中をぽんっと押した。

バランスを崩しそうになる私を受け止めてくれたのは、会長だった。
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