会長。私と恋のゲームをしてください。
「あぶね、」



会長がしっかりと私を抱きかかえてくれている。

おかげで床と顔がぶつからずに済んだけど……。


でも、この体勢も恥ずかしい。

抱きかかえられたままの私。

後ろで夏樹ちゃんがどんな表情をしているか、なんとなく分かる。



「ご、ごめんなさい、」



私を抱きしめたままの会長の胸に手を当て、顔を上げる。

会長と視線がぶつかり合う。

見つめ合ったまま、固まる私たち。


先に目を逸らしたのは会長だった。

近くで見る会長の顔は、相変わらずきれいだった。

それと、ほんのり顔が赤いような気がする。

どうしたんだろう……?



「かいちょ、」

「夏樹。……制服に着替えて来い」



会長の言葉に元気な返事をする夏樹ちゃん。

多分、夏樹ちゃんは階段を上がって自分の部屋に行ったのだろう。

階段を上る、夏樹ちゃんの足音が聞こえた。


私は……。

今も会長に抱きしめられている。

頭を会長の胸に、優しく押さえつけられた。


ドキドキが止まらない。

先ほどより強く抱きしめられている。

鳴り止まない鼓動。

こんなに密着していたら、心臓の音が聞こえちゃうよ。
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