会長。私と恋のゲームをしてください。
「……早いな」

「え?」

「心臓の音」



それは会長のせいです。

声にならず、飲み込んだ言葉。


会長は私をからかっている様子もない。

私の反応を見て面白がっている様子もないから、なんで抱きしめられているのか分からない。


抱きしめられている私の頭はフル回転している。


どくん。

どくん。


これは、誰の鼓動なの?

2つの心臓の音が混ざり合っている……?



「会長の、心臓の音も……、早いです」



思わず口にしてしまった。

何も言わない会長。

どんな顔をしているのか、怖いけど、見たい気持ちが強くなる。


私は会長の腕を押しのけて、顔を上げる。

会長の顔を見上げた……、けど。



「顔、真っ赤……」



会長の頬は先ほどより赤く染まっているように見えた。

メガネをしていないから、はっきりとは見えないけれど。

でも、会長は私の呟きを否定しなかった。


抱きしめられているせいなのか、恥ずかしさなのか。

なんなのか。

体中に血が駆け巡っているように熱い。
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