会長。私と恋のゲームをしてください。
朝ご飯の準備をしてくれるのかな。


私も手伝わなくては……。


そう思うのに、体が動かない。


会長に抱きしめられたことが頭から離れなくなっている。

思い出せば思い出すほど、顔に熱が集まる。
は、恥ずかしい……。


ちらりと会長を盗み見れば、淡々と朝ご飯の準備をしている。


なんでそんなに普通な顔していられるの?


そんな会長の姿にズキッと胸が痛む自分がいた。

胸が痛む理由も、会長が普通にしていることも、自分の感情が分からなかった。



「美雪ちゃん?」

「あっ……」



夏樹ちゃんに名前を呼ばれて我に返る私。

完全に自分の世界に浸っていた。

私は今まで考えていたことを振り払って、夏樹ちゃんの隣の椅子に座る。


食卓には美味しそうな和食が並んでいた。

会長も椅子に座る。



「いただきまーす」



夏樹ちゃんの声に合わせて、私も手を合わせる。

あ、味噌汁、美味しい。
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