会長。私と恋のゲームをしてください。
知らなかった。

私、生徒会のことを知っているつもりで何も知らなかったのかな。

それなのに、廊下で大声を上げて……。


後悔はしていないけれど、知らなかったのは私なんだと思うと、心が痛くなった。



「北澤」



会長の手と私の手が離れる。

熱くなっていた手が、冷やされていくのが分かる。

それが寂しいと思ってしまう自分はどうしちゃったんだろう。

いろんな感情が混ざり合って複雑な気持ちになる。



「さっきは、ありがとな」

「……え?」



会長の言葉に驚く私。


会長は……。

優しく微笑んでいた。



「生徒会のこと。北澤が生徒会のメンバーでよかったよ」

「っ、」



そんなこと言われたら。

また涙がこぼれちゃう。


『生徒会のメンバーでよかった』


私も。



「私も、生徒会のメンバーでよかったです」



素直な言葉だった。

涙で会長の顔がぼやけて見えるけど、微笑んでいるのは分かった。
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