『おばあちゃんの贈り物』-許嫁(いいなずけ)とか意味わかんない-
 改札に向かうひとの流れを横切って、ぶつかるのもかまわず走った。
春加(はるか)!」
 歩くより遅い(のぼ)りのエスカレーターを無視して、階段を2段とばしに駆け上がる。
 うしろから聞こえる足音に一瞬迷って。
(ゾンビの知らない所!)
 家とは反対のほうに駆けだした。

 商店街をぬけて。環状線にでて。
 耳鳴りがするほど、走って、走って。
 青信号の点滅を強引にわたって。
(もう大丈夫)
 ゼーゼー立ち止まったら、
「あっぶねぇこと、するやっちゃなぁ」
 しっかり追いつかれていた。

 一度止まったせいでガクガクする脚を、無理やり前に出す。
 加速がつくまえに、
春加(はるか)っ!」
 ゾンビに腕をつかまれた。
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