『おばあちゃんの贈り物』-許嫁(いいなずけ)とか意味わかんない-
「はなして!」
「おばさんに、いっしょに謝ったるで。帰ろう、なっ」
 なにを謝ってくれるのよ。
 婚約者なのに、ほかの子を好きになりましたって?
 でも、春加(はるか)のばかは、おれに惚れちゃいました、すみませんて?

「はなして、はなして!」
 振っても、あばれても、あたしの腕をつかんだゾンビの手は離れない。
「いかん。もうしまいや。帰ろう、なっ」
「はなせ! いやらしい手で、あたしにさわるなっ!」

 2泊3日だなんて。
 泊まりがけの旅行だなんて。

 ゾンビの腕を思いっきりつねった。
「あたたたた」ゾンビがあたしの腕を離して、おおげさに腕をふる。
「なあ、帰ろうて。おれもう、ひとりでよう帰らん」
 だったら!
「一生迷子になって、二度と…二度と、あたしのまえに現われるな!」
「春加っ!」
 心臓がパンクしても走ってやる。
「春加っ!」
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