『おばあちゃんの贈り物』-許嫁(いいなずけ)とか意味わかんない-
「もうほっとけぇせん……」
 一瞬、息もつまるほど、背中にまわった腕に力がはいって。
 あたしの身体は、ゾンビの胸にすっぽりかかえこまれていた。
(い…やだ)
「はなし…」「言ったやろ?」
 胸がどくん…と動く。
 あんまりその声がやさしくて。
「おまえ次第やって…。言ったやろ?」
(のぞみ)…く…ん」

「大丈夫。おれはおまえの婚約者には…ならんよ。ばーさまには悪いけど」
 びくっとしたあたしの耳元に、
「最後まで聞け……」
 ゾンビの声がやさしく言った。

 はずかしいのか…、こわいのか……。
 もしかして、うれしいのかもしれないけど。
 生まれて初めて、自分で自分がわからない変な気分のまま、身体だけが正直に、初めて知った男のひとの身体の感触にふるえだす。

「おれは、おまえを約束なんかで、しばりたないんや。まだまだ恋もして、上の学校にも行って。やりたいこと、よぉさんあるやろ……?」
 ゾンビの右腕が、あたしの背中からそっと離れて。
 いつかみたいに、ゆっくりゆっくり頭をなでる。
 なでられているうちに
春加(はるか)……」
 いつの間にか身体のふるえが止まっていた。
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