『おばあちゃんの贈り物』-許嫁(いいなずけ)とか意味わかんない-
「ゆっくり――ゆっくり。好き…から、はじめてくれればええんや。おれはずっと春加(はるか)のそばにおるで」
「の…ぞみ、くん」
「おれが――好きやろ」
「……な……」
 そんなことを聞かれるなんて思いもしなくて。
 言葉がのどの奥でつまったあたしに
「好きやろ」
 ゾンビがもう一度言う。

(ふざけんな)
(うぬぼれんな!)
(ばかなのきみ?)

 頭のなかは高速で逆らうのに、その声があんまりやさしくて。
「うん」
 素直にうなずいてしまうあたり、ばかなのはあたし。
「よしよし。素直でよろしい」
 ゾンビが笑う。
 なに、その余裕。
 やっぱり勝ったのは怒り。
「うそだしっ」
 ぷいっと顔を背けたら
「どのくらい好きや?」
 ゾンビは平然と身体を折り曲げて、あたしの視線を追いかけてきた。
「だから!」
(うそだし!)
 声も出ないまま口のなかでつぶやいてみても、目の裏が熱い。
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