『おばあちゃんの贈り物』-許嫁(いいなずけ)とか意味わかんない-
「わかる?」
 聞いてきたのはお母さん。
「わかんないね」
 顔を見合わせて、あたしの手の中で爆音を響かせている子機を見る。
 ふっ、と音が途切れて。
 あわてて耳に当てた受話口から流れてきた『おめー、ぶったおれても、わしゃ知らんぞ』という叫び声はタッチャンだ。
 うーん?
「予定通り、(のぞみ)さん、帰ってくるのよね?」
「来るんじゃない?」
 ベッドの上でケータイのアイコンがピカッと光ったのを横目で見ながら、お母さんの背中を廊下に押しやる。

 トーク1、2、と増えていく未読アイコン。
 ドキドキしながらケータイを両手で包む。
「…………ぅ」
ゾンビ《am6》
ゾンビ《帰る》
「……これだもの」
 男の子って、つまらない。
(でも……)
はるる《待ってる》
 すぐに既読になった画面に笑えてしまう。
 朝6時に家に帰ってくるカレシに、待ってるって言える女子高生はきっといないと思うから。
 ぽふんとベッドに寝転がって、あたしも寝る準備。
「あぁ、もう」
 寝る。寝ろ。寝なさぁぁぁい。
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