『おばあちゃんの贈り物』-許嫁(いいなずけ)とか意味わかんない-
 タッチャンが「ふぅぅぅぅぅぅぅう…」
 長いため息をついた。
「乙女やなぁ。お兄さんは感動で、泣いてまうぞ。うっうっうっ」
「笑かすな、ぼけっ!」「ほーや、ほーや」
 あはははは。
 きゅうにみんな元気になっちゃって。
「おーし! ほしたら思う存分、永井のやつをこらしめたるぞ!」
 タッチャンが、ジャラッとこぶしをつきあげる。
「お一っ!」「おーっ!」
 おー!

 タッチャンが探りだした、沙月(さつき)の乗っているはずの新幹線が、ホームにすべりこんできた。
 そわそわグリーンマークの下で待つ永井さんのうしろに、みんなしてクラッカーを持ってそろーり、そろり。
春加(はるか)……」
 両手にあたしの荷物を持ったゾンビが、小声であたしを呼んだ。
「あっ。うん。そろそろ荷物、自分で持つよ」
 手を出すと、ゾンビがバッグから手を離す。
 んっ?
 ちがうの? …なに?
 すいっとゾンビの顔が、耳元に近づいてきた。
「おれたちはもっと、うまくやろうな」
「なっ…」
 あわてて口を手でふさいだけど。
「しっ」「しーしー!」「しーぃっ!」
 前を向いていたみんながいっせいに振り向いちゃって。
「ご…めんな、さい」
 ぺこペこと頭をさげまくり。

 あなたってば!

 あなたってば、いったい、なにを聞いてたの?
 あたしのお願い…、あたしの気持ち……、
 言ったでしょぉおおおお?
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