『おばあちゃんの贈り物』-許嫁(いいなずけ)とか意味わかんない-
「おれも、デリケートな乙女心をわかったるで、おまえも、デリケートな男心を大事にせなあかん…ちゅうこと」
 はぁ?
「おまえに言うのはなんやけど……」
 やだ。
 なにきゅうに、真面目な顔してんのよ。
「おれ……こわいんや」
 へっ?
「この先、いろいろあるやろなーと思うと、でら不安で…たまらん」
「そ…んな……」
 まじ?
 18歳にもなって。
 大学生になったんでしょ? 男でしょ?
 親元をはなれたくらいで、なによう。
 みっともない。
春加(はるか)ぁ……」
 やめて。
 そんな、せっぱつまった顔でせまられたら、ちゃかしていいのかどうか、あたしだって困っちゃうだろ?
「なっ」ゾンビが真剣な顔でさらにせまってくる。
「幽霊って、おるんやろか」
 へっ?
「じーさんばーさんの幽霊が出そうで、ここ、こわいんや、おれ」
 こっ…、
「んの、ばかたれ!」

 ううう。
 こんなやつが…、こんなやつが親戚だなんて。
「春加ぁ!」
 うるさいっ。
「待てって。なぁ」
 どすどす部屋を出るあたしのあとを、ゾンビの声が追いかけてくる。
「こんなこと、ほかのだれにも言われーせん。なあ、頼りにしとるて。春加ぁ」
 どれだけ情けない男なの?
「もっ」
 知らん。知らん。知らーん。
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