『おばあちゃんの贈り物』-許嫁(いいなずけ)とか意味わかんない-
「ほれ。こんなとこに放りこんだら、かわいそうやねぇか。くまちゃんが」
「…………」
 なんでわかった?
 ギリギリとにらんでやるけど(ほほ)が熱い。
「だれのせいよ!」
「少なくとも、おれのせいやないわな。ピアノは弾くもんで、物置き台やねぇで。なあ、くまちゃん」

 きゃぁぁぁぁぁあ。
 あたしのくまきちにキスするのやめてぇぇぇ。

 秒で取り返す。
 (ほほ)の熱さはもう耳まで広がっている。
「あ。もしかして、間接キッスになってまったかな?」
 にやにや笑うゾンビがにくらしい。
 なにしろ図星だ。
「ばか言ってら」
 あわてて横を向いたけど。
「お。赤くなっとう」
 ……しっかり見られた。
(くっそォォォォォ)
「メロン食べたら、さっさと出ていきなさいよ」
「はいはい」
「……ぅ……」
 おとなしくメロンに集中されても、それはそれで…ちょっと困るんだけど。
 お父さんでさえ、この部屋に入ってこなくなってから、もう何年? …ってかんじなのに。
 ただでさえ弾きもしないピアノでせまい部屋が、なんだか、ゾンビがひとりいるだけで、ものすごぉく、せまい。
「ごっそさん」
 ゾンビが膝においたお皿に両手をあわせてから立ち上がる。
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