『おばあちゃんの贈り物』-許嫁(いいなずけ)とか意味わかんない-

「あー。メロン食ったら、なんか、(のど)がイガイガするわ。春加(はるか)は?」
「べっつにィ」
「茶ぁ飲みたなったな」
 あっ。ラッキー。
「向こう行くなら、ついでにあたしのお皿もかたずけてよ」
「ありえん」
「わっ!」
 ゾンビがひとの腕をガシッとつかむ。
「おめえが下で、紅茶いれるんやろ?」
「なんで?」
 あたしは召使か。
「ほれ。行こまい」
「ちょっ! ばか!」
 ふりきろうにも、あたしの右手には、まだフォーク!
 左手にはメロンの皮がツルツル動いているお皿がのっている。
 おまけにストッキングをはいた足は、板張りの廊下に出たとたんにスケート状態。
 そのままずるずる引っぱられてリビングまでは、あっというま。
「おじさんらぁは歓談中やで、静かにせえよ」
 ゾンビがあたしの手から、さっとお皿とフォークを取って。
「失礼しまーす」「ゃ…、ちょ…」
 やっと両手があいたっていうのに、あたしは逃げる間もなく、リビングに押しこめられていた。
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