『おばあちゃんの贈り物』-許嫁(いいなずけ)とか意味わかんない-
 驚きのあまり、身体が機能停止。
 棒みたいに固まってしまったのにゾンビは階段を下りていく。
 うわわわわっ。
 左腕を引っぱられている上半身だけが、規則正しく階段を降りていくゾンビのほうにかたむいて。
「ひぇ――っ」
 ゾンビの背中にどしーん、と墜落。
「ぉわっ!」
 突然おんぶオバケになったあたしにのしかかられたゾンビが、手すりにしがみついてふんばっている。
 それで階段から転げ落ちずにすんでいること。
 わかっているけど、ほかに体重の持って行き場がなくて。
「い、い、い、い、今の! 聞こえた?」
 思わずゾンビの首にしがみつく。
「ばっ…。首、首! ひとを殺す気かっ」
「ねえ!」
「どこ見て歩いとるんや、たわけ」
「ねえってばっ!」
 聞こえたでしょ?
「あーもう! いつまでおぶさっとるつもりや。離れい!」
 あっ。
 あわてて腹筋背筋を駆使して離れると、いつも見上げる高さのゾンビの顔が、すぐ目の前で唇をひん曲げていた。
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