『おばあちゃんの贈り物』-許嫁(いいなずけ)とか意味わかんない-
 MCに入ったところでジュースのおかわりをもらって。
 今度は本当に(のど)が渇いていたのでありがたく一気飲み。
 ボーカルさんのナゴヤ弁の漫才に笑って。
 次の曲が始まると、自然にジャンプ、ジャンプ。
 タッチャンといっしょに(こぶし)をふりあげて、ぴょんぴょんぴょん。
「あはははははは」
 楽しくて笑いが止まらなくなって。
 跳ねながら、ぷくぷく沈んでいた。
 景色がぽわわんと揺れる真っ暗な海の底に。


春加(はるか)! 春加!」
 な…あに、よう。
 目覚まし、鳴ったぁ?
「うぅーん。あと10分……」
「だれがこんなガキに飲ましたんや」
 やあだ。ゾンビの声だ。
「ゾンビィ」
 なんでゾンビがあたしを起こしにくるの?
「春加? おい!」
 やぁだぁ。
「な一にィ? その頭」
 あははははは
「立ってる、立ってる」
 この、はりねずみ。
「えいっ! えいっ!」
 つんつんとがった髪を両手でわしづかみ。
「あたたたた」
「こらー。逃げるなゾンビィ」
 引っこ抜いてやるう。
 きゃははははは。
「あっかーん。完全にできあがっとる」
 なにが、できてるってえ?
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