『おばあちゃんの贈り物』-許嫁(いいなずけ)とか意味わかんない-
「お、気がついたか?」
「……ぅ……」
 な、に?
 あたしは重っくるしい宇宙服を着て、無重力の宇宙にいた。
 身体が動かないよ。動かないのに浮いてるよ。
「ほら、水」
 ゾンビの声は百万光年の向こうから聞こえてくる。
 これがうわさの異世界転生?
「よしよし、こぼさんように、ゆっくり飲めよ」
 ま…た、ひとをガキあつかいしてぇ。
「うっ…」
「どうした? 気分悪ぃのか?」
 うん。はきそう、だ。


 もうぐったり。
 壁の向こうがにぎやかな、なんだか暗い狭い部屋で、ゾンビの(ひざ)まくらで硬い木のベンチに横になりながら、今度という今度は、なんでだかわからないけど、自分が酔っぱらったらしいことを、しっかり認識。
 なにしろ親戚の集まりで、いつも見ているおとなたちとそっくりだから。
(うー)
「ほかのひとは?」
 さっきからだれも見ないけど。
「ん? ここは終電まで客と打ち上げするで。みんなまだ飲んどるわ」
「うそ! 今なん…」
 起き上がろうとして、頭がぐらぐら。
 ゾンビの膝に逆もどり。
「心配せんでも、ライブが終わったいうことは電話してあるし。おまえが腹減ってよう歩かん言うからって。おばさんだましたことは心苦しいけど――。11時までに帰ればええと。…だで、まぁ少し横になっておきゃあ」
 ぅー。ご親切さま。
 ありがたく目をつぶって脱力したら、
「なあ?」
 頭の上で、半分笑ったゾンビの声がした。
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