『おばあちゃんの贈り物』-許嫁(いいなずけ)とか意味わかんない-
「う…ん?」
 うす目をあける。
「ゾンビって、なんや?」
 げろっ。
 反射的に上がった頭をゾンビに押し戻された。
「最初は酔っぱらっとるで、ノゾミがなまっとんのやろ…って言っとったんや、みんな」
 うひゃぁ。
 あたしの口ってば。
 あたしの許しも得ないで、なんということを。
「…でも。ゾンビやなあ?」
 おそるおそるマブタを全開。
 見上げたゾンビは笑っていたから。
「うん…。ゾンビ」
 なんでもなく口をついてでた。
「なんでや?」
「あのね……」
「うん?」
「はれぼったかったんだよ、目が」
「目が? いつ?」
 ぎゅっと目をつぶると、くらくらする。
「おばあちゃんの……お通夜のとき」
 酔っぱらうってどういう状態か、親戚の集まりで観察するおとなたちしか知らないけど。
 ふつうじゃなくなるのは知ってる。
 だからやっぱり酔ってるんだわ、あたし。
 そうじゃなかったら、あのときはあんなに腹を立てたのに、こんなになんでもないふうに、言えるわけ…ないもん。
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