『おばあちゃんの贈り物』-許嫁(いいなずけ)とか意味わかんない-
「そうか……。あのとき、な」
 突然ゾンビのてのひらが、ふわっと髪におちてきた。
 ゆっくり動いて……、いい気持ち。
「おれ…」ゾンビの手が止まる。
「泣いとったでな、ずっと――…」
 う…そ。
「知らせ聞いて。やっぱ、こんなライヴやっとって、おれだけ連絡が遅れて、な。帰ったらメモには来んでええ書いたったんやけど――…」
 う、そ。
「ひと晩泣いて……。やっぱ、ばーさんが呼んどる気がして、東京に行った」
「…………」
「笑えんよなぁ、春加(はるか)のこと。ははは…」
 そんな…、強がって笑わなくてもいいのに。
 あたし、うれしいよ。
「望くん……」
 となりの部屋がにぎやかなのがありがたかった。
 それきりゾンビは黙っちゃったから。
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