『おばあちゃんの贈り物』-許嫁(いいなずけ)とか意味わかんない-
 今まで、学校の帰りに寄り道するなんて言ったら『どこに?』『どなたと?』 って、かぎりなく追及してきたくせに。
 うれしさをかみ殺しているあたしの足を、にっこりしながらゾンビがテーブルの下で()ってるなんて、知ったらどうしたかしら。
 実の娘としちゃ実に腹立たしいけど。
 あの、ゾンビに対する絶大な信頼は、どこからくるんでしょね。

 * * *

「うーん。やっぱり自分で買わないとだわ」
 お母さんが買ってくれるカーディガンはいつもジャストサイズで。
「かわいくなーい」
 ()(そで)とか姫袖とか、あこがれるけど、したことはない。
 白い服をずっと白いまま着させてくれるお母さんには感謝してるけど。
 あたしだって、あざとく“女子”してみたいのよぉ。
 グロスを塗るだけでドキドキしてる場合じゃないの。

 朝ごはんのとき、ゾンビはいつもどおりヨレヨレのパーカーにジーパンだったけど。
 冒険の主人公はあたし。
 お供のゾンビがヨレヨレだって、そんなのどうでもいいわ。
 本屋さんの場所を教えたら、あとはあたしの冒険タイム。
 お猿ゾンビはご主人様におとなしく、ついてらっしゃい。
 行ってみたいショップの場所はちゃんとスクショしてある。
 バッチリだ。
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