『おばあちゃんの贈り物』-許嫁(いいなずけ)とか意味わかんない-
「わかった! デートでしょ?」
「ちがーう!」
 自分でも、ふりむく速度が早すぎた…と思ったから、沙月(さつき)が誤解したのも無理はない。
「うそ。そうなの? 信じられない。冗談で言ったのに」
 それはないでしょう、それは。
 そこまで言われたら……、
「あたしだって、カレシくらい、いるもんね」
 見栄はっちゃうよ? あたしだって。
「きゃーだぁ。まじ? まじ?」
 うわ。
 そんなにせまってこられると、うそだって顔に出ちゃうからやめて。
 あたしの顔をのぞきこむ沙月の(まゆ)がぎゅうっと寄った。
「やっぱり本当だったのね。このあいだ新宿で、お春のこと見たって子がいるのよ」
 思わず階段の手すりをつかむ。
「や! もう! だれよ、そんなうそ言うの。ひとちがいでしょ」
 頭のなかに、ゾンビにおぶさって歩いた道がプレイバック。
 (どこでだろう。いつだろう)
「今ごろごまかしても、もう遅いわよ」
 沙月が手すりを握りしめていたあたしの腕を思いきりつねる。
「いたたたた!」
 助けてぇぇぇぇぇ。
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