『おばあちゃんの贈り物』-許嫁(いいなずけ)とか意味わかんない-
「来てないみたいだけど――、無事に受験、終わりました?」
 名前も知らないような大学なら、あたしの学校をどうのこうの言わないでほしいわ。こっちには皮肉を言うデータもないんだから。
 浪人したとかなら、思いっきり皮肉に残念がってやる。
 ほら、言ってみろ。
「あれま。こんな場では言わんつもりにしとったに」
 伯母さんが、ほほほと1オクターブ高い声で笑って、まわりを見渡す。
 やだ。
 なに? この待ってました感。
「受験だわ、仕事はあるわで、めっちゃ忙しい子やでぇ、()んでもえぇ言ったんやけどね」
「仕…事?」
 なに? 定時制にでも通ってるの?
 パチパチと目を瞬いたあたしに気づいて、伯母さんが胸を張る。
「ほうや。自分のこずかいくらいは自分で稼ぎよるのよ、うちの(のぞみ)は」
 うっ。まずい。
 伯母さんの鼻がぴくぴく動いてる。
 (やだ)
 これは、ハマってしまったかんじ?
「ほんでも、ちゃーんとW大に受かったわ」
 きたぁぁぁ。
 鼻が天井まで伸びた。
 大失敗。
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