『おばあちゃんの贈り物』-許嫁(いいなずけ)とか意味わかんない-
「あいやー。望くん、W大に受からはったが?」
「あれま姉さん、本当かね」
あっと言う間にひとが集まってきた。
「まあ、おめでとうございます。お義姉さん」
お母さんまでゴマすりにきちゃって。
なんなのよう、これは。
お通夜っていうのは、親戚の近況報告イベントなわけ?
だれも泣いてなんかなくて、自分たちのことを話すのに夢中。
ばっかやろう。
つぶやいたら、また涙があふれてきた。
みっともないから、こっそり部屋のすみに移動したら、だれも悲しんでなんかいないと思ったのに、ひとり、うつむいて、じっとしてるひとがいる。
全然、場にそぐわない――なんでって、髪がツンツンにとがってるから――真新しい喪服を着た若い男のひと。
正座した膝の上に、げんこつをのせて、じっとうつむいている。
泣いて、泣いて、自分の鼻が真っ赤でも、ほかのだれかが悲しんでいるのを見るのはつらい。
そっと彼に背中を向けたら、突然うしろでどすん! と音がした。