『おばあちゃんの贈り物』-許嫁(いいなずけ)とか意味わかんない-
 ノックして。
 ドアを開けると、ゾンビは真っ黒なセミダブルのベッドに腰かけて、エレキギターの弦をはりかえていた。
 とりあえず、スチールの机の上にパイと紅茶をのせたお盆を置いて。
 皮肉を一発。
「CDって…?」
 うそつき男!
「ほれ!」
 あっ…。
 ゾンビが小さなビニール袋を投げてよこした。
「やる」
 うそ。
(くれる…の?)
 てっきり、あたしを下に呼びつける口実だと思っていた自分がうしろめたくって。
「こんなもの」投げ返す。
「もらえないよ! 理由ないもん」
 ベッドの上ではずんだビニール袋を、ゾンビがじろっと見て、ギターを足元に置いた。
「そうやな。考えてみたら、途中でへソ曲げて帰ってまうやつに、つきあってもらったお礼なんか、だだくさやわ」
 うっ。
 なに言ってるのかわからないけど。
 お礼なんかすることはないって言ってるのよね?
「あのな」ゾンビがモヤッているあたしの視線をつかまえにくる。
「どういう態度や、今日のアレは。やきもちも、たいがいにせぇよ」
 や…きもち、だあ?
「だれがよ! おじゃまみたいだったから、先に帰ってあげたんでしょ? 感謝してよね」

 やきもち!
 やきもちィ?
 どこからそんな言葉が出てくるの?
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