『おばあちゃんの贈り物』-許嫁(いいなずけ)とか意味わかんない-
「勝手なこと言うな! こっちは、おめえの友だちや思って、親切したったんやろ?」
「よく言うよ! すかして標準語なんか、しゃべっちゃって」
 頭…クラクラするわ、ったく。
「そんなにだれの前でも、あけっぴろげに自分を見せたりせんわ。どこから来たかだの、なんで来たかだの、詮索(せんさく)されたらダルイやねえか」
「言うわりには、いろいろしゃべったみたいじゃない」
「あれ…は、おめえが富士山に夢中になってまったで、あの子がヒマそうやったから……」
 ふうーん。
「そりゃ、よかったこと」
 ゾンビが開いた(ひざ)にひじをついて、頭をかかえた。
「なあ…」
 なによ。ため息なんかついちゃって。
 ゾンビの頭がゆっくり上がる。
「たのむで。きげん直してくりゃあ」
 ふん。
「悪いけど。あたしにもちゃんと標準語でしゃべってくれない? 悪い耳が、うーんと悪くなっちゃうから、さ」
春加(はるか)
「な…によ」
「なあ。おれはおめえのこと、ちゃんと知りたい思っとるで。こっちもありのままを見せとるんやぞ。作った自分で話したってしゃあないやろが」
 まじめぶっちゃって。
 そういうの、やめろ。
 あたしは別に…、そうだよ、あたしは別に……
「あんたのことなんか、知りたくないもん」
 ゾンビの顔色が変わった。
< 73 / 131 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop