『おばあちゃんの贈り物』-許嫁(いいなずけ)とか意味わかんない-
「ご飯を食べに上がってきたら、ピアノ返せって言ってやる」
「なんだ、おまえは。赤ちゃんじゃあるまいし。自分は使いもしないくせに、ひとにやったら、きゅうにもったいなくなったのか?」
 ばかおやじぃ。
 そんなんじゃなぁーい!


「セレナーデ、すてきだったわぁ、(のぞみ)さん。生演奏でお食事の仕度なんて、夢みたいだった」
「リクエストがあれば受けますよ」
「まぁ! いいの?」
「もちろん。…まだしばらく朝の指ならしを続けてもいいかな、おじさん」
「加代子さんもピアノもうれしそうだ。続けたらいい」
「ありがとう」
「ところで望、これこれ、この記事どう思うね」
「ん? どれ?」
「んもう、パパってば。望さんに、ゆっくりご飯を食べさせてあげて!」
「NHKでも取り上げるんじゃないかな。加代子さん、ちょっとテレビつけて」
「はいはい」
 う、ぁああああ。
 くちをはさむ機会をうかがっているうちに、お父さんに先手を取られてしまった。
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