『おばあちゃんの贈り物』-許嫁(いいなずけ)とか意味わかんない-
 ゾンビが、あたしを見てる。
 顔…上げなくたってわかるんだ。
春加(はるか)ちゃん……」
 今あたしに話しかけるな、ばかゾンビ!

 頬が……熱い。

 きゅうに息苦しいのは、梅雨だから?
 そう…だよね。
 この、家のなかのイヤな湿気のせいに決まってる。

「ごめんな、春加ちゃん。起こしちゃった罪ほろぼしに、今日、なんかごちそうするよ」
 えっ…。
「あら、すてき。よかったわねぇ、春加」
 な…に、が!
「いいよ、そんな。気を使ってくれなくて」
 なに考えてるの?
「いいですよね、おばさん。お茶くらい飲んできても」
「ええ、ええ。そうしてやって。なんだか春加ったら、このごろ勉強勉強って、お部屋にこもりっきりだったでしょ。慣れないことをしてって心配だったのよ。どうぞ、つれだしてやってちょうだいな」
 勝手なことを――っ。
 いつも勉強しろ勉強しろって言ってたのは、だれよ。


 玄関を出たら、門柱にもたれてゾンビが立っていた。
「ええ目覚めやったろ?」
「なっ…」んだって?
 あたしがまだ寝てるって……
「知ってて…やった、の?」
「何カ月いっしょにおる思っとるんや」
「ひどい!」
 も、絶交だ。
 こんなやつ、お父さんやお母さんになんて言われたって絶交だ。
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