『おばあちゃんの贈り物』-許嫁(いいなずけ)とか意味わかんない-
 道の真ん中で、駅にいそぐおじさんたちに囲まれて、(ほほ)がぬれているワケを、どうやってごまかせばいい?
 おばあちゃん、教えてよ。
 これからいくつ自分にウソをつけば、あたしは……あいつを好きになる前のあたしにもどれるの?
(こんなの……)
 こんなあたし、ばかみたいだ。
 ひとりで、ばかみたいじゃないか。

 会いたいけど、会いたくない。
 あいつのことを、もっと知りたいけど、知りたくない。
 婚約者っていう言葉が、頭をぐるぐるまわる。

 婚約者って、カレシのその先でしょ?
 ふたりでひと組だって。
 約束したってことでしょ?
 あいつはあたしのものだって、みんなに言ってもいいってことでしょ?
「…………」
(でも、ちがう……)
 それは、おばあちゃんの決めたことで、あたしたちが決めた約束じゃない。

 あたしには泣く権利もない。
 はとこなんて他人だ。
 あいつだってそう…言った。
 言われたんだ、あたしは。
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