『おばあちゃんの贈り物』-許嫁(いいなずけ)とか意味わかんない-
「お春ってば、ぜんぜん連絡しないんだって? たまには電話して、わたしのよいウワサでも流しておいてって頼んでたのに」
「う…ん。ごめん」
「まあよいわ。今度こそ次のデートの約束してみせるから」
「…………」
「今もね、ずーっと、ライヴに誘ってくださいっておねだりしてたのよ」
「ふ…うーん」
ゆれる電車に気をとられるふりで、目をそらしたあたしの腕を、
「さ、行こう」沙月が引いた。
一両となりに乗ったゾンビが、ぬいだジャケットをかかえて、ドアのそばで腕を組んでいるのが、車両のしきりドアのガラスの向こうに見える。
黒い無地のTシャツなのにまぶしいのは、男の子らしい腕が反射している陽の光のせい…なのかな。
(わかんない……)
じっとこっちを見透かしている無表情な顔が、突然、雑誌のモデルみたいにほほえんだ。
ふ…と見ると、沙月がゾンビに手をふっている。
(そ…おだよ、ね)
あたしに笑いかけた、わけじゃ、ない。
ああ。
こんなことで、こんなにイラついていたら、この先どうするの?
「う…ん。ごめん」
「まあよいわ。今度こそ次のデートの約束してみせるから」
「…………」
「今もね、ずーっと、ライヴに誘ってくださいっておねだりしてたのよ」
「ふ…うーん」
ゆれる電車に気をとられるふりで、目をそらしたあたしの腕を、
「さ、行こう」沙月が引いた。
一両となりに乗ったゾンビが、ぬいだジャケットをかかえて、ドアのそばで腕を組んでいるのが、車両のしきりドアのガラスの向こうに見える。
黒い無地のTシャツなのにまぶしいのは、男の子らしい腕が反射している陽の光のせい…なのかな。
(わかんない……)
じっとこっちを見透かしている無表情な顔が、突然、雑誌のモデルみたいにほほえんだ。
ふ…と見ると、沙月がゾンビに手をふっている。
(そ…おだよ、ね)
あたしに笑いかけた、わけじゃ、ない。
ああ。
こんなことで、こんなにイラついていたら、この先どうするの?