『おばあちゃんの贈り物』-許嫁(いいなずけ)とか意味わかんない-
「お春!」
 遠目にもカラフルな花柄ワンピースの沙月(さつき)が、上機嫌で手をふっている。
 渋谷のハチ公前なのに。
 日曜日のハチ公前は、前ってどこ? と悩むほど待ち合わせのひとたちでいっぱいとはいえ。
「こういうダサイ場所、いやなんでしょ? もっとマシな場所にしてって、言ったらよかったじゃない、(のぞみ)くんに」
「あら。別に望さんと待ちあわせじゃないもの」
 えっ?
「言ってなかったっけ? 望さんはね、もうスタジオに入ってるのよ。ここで待ちあわすのは、あたしとお春と…」
 あたしと沙月と?
「お春のカレシでしょ?」
 あたしのカレシ!?
 だれ、それ。
「よっ!」
「わっ」

 ただでさえ驚いていたのに、うしろから肩をたたかれて心臓が破裂。
 とびすさったら目の前で、
「よっ。やっとかめやね、春加(はるか)ちゃん」
 鎖ジャラジャラ、グラサンぎらぎらの、あのマネージャーさん。タッチャンが笑っていた。
< 88 / 131 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop