『おばあちゃんの贈り物』-許嫁(いいなずけ)とか意味わかんない-
 あいつ……。
 あんなにふくれてたのに。
 ギターを弾きだしたら、もうすっかりなにもなかったみたいなんだから。
(だから、もうちょっと)
 もうちょっと、いさせてね。
 もう二度と、絶対、迷惑はかけないって誓うから。
 ギターを弾いている間なら、あたしもここにいて、いいでしょ?
 あたしも。沙月(さつき)も。
 迷惑な親戚も。好きな子も。
 みんな平等に、忘れてくれるでしょ?


「ところで、いつまでやってるのかしら、これ」
 沙月があたしの耳元で叫ぶ。
「えっ?」
 言われて見た腕時計は、もうすっかり門限があやうい時間。
(見とれていて……)
 ゾンビの指が動くとおりに音がするエレキギターに、つい見とれていて、時間のことなんか、すっかり忘れていた。
「あたし。帰らなきゃ!」
「えっ? やっ! ちょっとお春、なに言ってんの?」
「だって……」
 今日はゾンビといっしょだって、お母さんに言ってないんだもん。
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