『おばあちゃんの贈り物』-許嫁(いいなずけ)とか意味わかんない-
「なんや、もう帰るのか? 春加ちゃん」
タッチャンがケータイの時計を見る。
「ごめんなさい。あたし、門限6時半だから……」
「ひゃぁ。今どき門限を守るやなんて、ほんと、えぇ子やなあ、キミは」
「…や、あの、そんなのじゃ…ないんですけど」
「望の言うとったとおりやね」
えっ……?
ゾンビが、なんて?
聞いてみたかったのに。
「ねえ、いま帰るなんて、いやよ、わたし」
沙月があたしの耳元でだだをこねて、シャツをぐいぐい引っぱるから、それが気になって。
「いま帰ったら、ばかみたいじゃない。わたしたちまだ望さんと、ごあいさつもしてないのよ?」
えっ? そ…うだった?
「こうなったら、わたしだって意地よ。ケーキくらい、ごちそうしてもらうから」
話の内容がなんとなくわかったのか
「ほしたら……」タッチャンが、ジャラッと鎖を鳴らして立ち上がる。
「わし、春加ちゃん送ってくるけど……。お嬢ちゃん、ひとりでここにおるか? どうせあと30分くらいのもんやし」
もちろん沙月の答えは首を縦振りこくこく、イエス。